共謀罪(テロ等準備罪)を創設する法案が、5月19日、審議を十分に尽くさないまま、衆議院法務委員会で可決されました。
しかし、同法案の問題点については、国外の専門家も懸念を表明しています、
プライバシー権に関する国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏は、同法案がプライバシーを不当に制約するおそれがあり、立法過程の拙速さについても問題があると指摘する書簡を、5月18日付で安倍首相に送付しました。
JCLUは、この指摘を広く共有するため、即日この書簡を要約し、情報発信しました。(要約は後記のとおり)
なお、JCLUは、今年10月1日(日)午後に一橋講堂で開催する70周年記念シンポジウムのゲストスピーカーとしてケナタッチ氏を招聘しており、大量監視とプライバシーをめぐる国際社会における議論と取組みについてお話しいただく予定です。
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2017.5.19
国連プライバシー権に関する特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ氏が、5月18日、共謀罪(テロ等準備罪)に関する法案はプライバシーや表現の自由を制約するおそれがあると懸念を示す書簡を安倍首相宛てに送付しました。
書簡では、法案の「計画」や「準備行為」の文言が抽象的であり恣意的な適用のおそれがあること、対象となる犯罪が幅広く、テロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいることを指摘し、いかなる行為が処罰の対象となるかが不明確であり刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があるとしています。
さらに、プライバシーを守るための仕組みが欠けているとして、次の5つの懸念事項を挙げています。
- 創設される共謀罪を立証するためには監視を強めることが必要となるが、プライバシーを守るための適切な仕組みを設けることは想定されていない。
- 監視活動に対する令状主義の強化も予定されていないようである。
- ナショナル・セキュリティのために行われる監視活動を事前に許可するための独立した機関を設置することが想定されていない。
- 法執行機関や諜報機関の活動がプライバシーを不当に制約しないことの監督について懸念がある。例えば、警察がGPS捜査や電子機器の使用のモニタリングをするために裁判所の許可を求める際の司法の監督の質について懸念がある。
- 特に日本では、裁判所が令状発付請求を認める件数が圧倒的に多いとのことであり、新しい法案が、警察が情報収集のために令状を得る機会を広げることにより、プライバシーに与える影響を懸念する。
書簡の全文はこちらからごらんいただけます。
http://www.ohchr.org/Documents/Issues/Privacy/OL_JPN.pdf
- 特別報告者は、国連の人権理事会によって、特定の問題について調査し報告するために個人の資格で任命される独立の専門家です。ジョセフ・ケナタッチ氏はIT法の専門家で、2015年7月に初めてのプライバシー権に関する特別報告者に任命されました。
http://www.ohchr.org/EN/Issues/Privacy/SR/Pages/SRPrivacyIndex.aspx
(文責:JCLU事務局長 藤本美枝)
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書簡全文の和訳については、下記のサイトをご参照ください。
- 投稿タグ
- 国際人権, 刑法・刑事手続, 表現の自由・マスメディア