『患者の権利』とは?
患者の権利には、次に説明するように、いろいろな側面のものがあります。
インフォームドコンセント、患者の自己決定権
医療行為は、患者の病を治すことを目的とするものですが、その一方で、患者の身体に対する侵襲(しんしゅう)を伴うものです。たとえば、手術は、患者の身体を傷つけることなくして行うことはできませんし、薬物治療は、異物である薬物作用による影響(効能となることもあり、望ましくない副作用であることもある)を避けることはできません。したがって、どのような場合に、どのような医療行為を行うべきかについては、最新の医療水準により判断されるべきことは当然として、最終的には患者本人が、十分な情報提供を受けて決めることが原則となります(インフォームドコンセントや、患者の自己決定権といわれます。)
医療における個人情報やプライバシーの保護
医療を受ける患者は、医療機関に対し、個人情報やプライバシーを開示することを避けることができません。病気であること自体個人情報として保護されなければなりませんし、症状や、受けている治療の内容も個人情報やプライバシーの一つです。医療の実効性を高めるため、あるいは医療水準を向上させるため、そのような個人情報やプライバシーを利用する必要があるとしても、それは必要な範囲に限られなければなりませんし、原則としてその患者の同意に基づいてなされなければなりません(医療における個人情報やプライバシーの保護の問題です。)
感染症対策における患者の権利
近時話題のインフルエンザを始めとする感染症については、感染症予防政策として、いわゆる感染症対策新法に基づき、患者に関する情報を収集することから、患者や一般市民の行動を制限することまで様々な施策が予定されています。患者の情報を収集することは、患者のプライバシー保護と緊張関係にたち、行動制限は人々の自由を制約することになることから、感染症対策に必要で合理的なものに限られなければならないはずです。しかし、過去のエイズパニックの例で見られるように、感染をおそれる余りパニックがおき、患者を感染源=犯人に仕立て上げ、犯人探しに走ってしまう結果、患者のプライバシーを不必要に侵害し医療を受ける機会すら奪ってしますおそれがあります。このような事態になると、患者の権利の侵害という点からも、また患者から適切な情報を収集して予防対策をたてるという点からも、マイナス面ばかりということになってしまいます。感染症予防については、冷静な医学的・疫学的見地から正しい情報を迅速に提供することが大切で、患者のプライバシーを不必要に制限したり、根拠の乏しい行動制限等が発動されないよう常に監視する必要があります(感染症対策における患者の権利)。
医療を受ける権利
外国人、とりわけ入管法上認められない形で滞在している外国人に対しても、人道上、また感染症予防という見地からも、適切な医療を提供することが必要です。医療を受ける権利は、憲法上の社会権(25条等)に基づくものと理解でき、財政上の手当が必要であることから、その実現のためには、政府や医療機関に対する働きかけを続けていく必要があります。
声明・意見書
2015年
2003年
1999年
1998年
1997年
1988年
1987年
法案
1988年
- 疾病サーベランスの適正を確保する法要綱
JCLU会員有志で発表したものです。
医療と患者の権利小委員会
この小委員会の前身は、「エイズと人権に関する小委員会」です。1987-8年のいわゆるエイズパニックに際し発足し、HIV感染者を犯人扱いする動きや、感染者の権利を不必要に制限しようとする動きを危惧し、当時提案されたいわゆるエイズ予防法案に対する意見を公表しました。その後、しばらく活動を休止していましたが、1997年に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準 (GCP) 改定素案」に対する意見を公表し、続いていわゆる新感染症法の制定及び見直し時期に法案や現行法の問題点について検討を行い、感染者の権利を不当に制約してはならないという見地から意見書を公表しました。また厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業「エイズと人権・社会構造に関する研究」に協力し、患者の権利について多角的な検討を行いました(1998年から2000年)。さらに、2003年には、悲惨な薬害を引き起こし薬事法上無許可医薬品となったキノホルムが、近年ガンやエイズの特効薬として広く個人輸入されていることから、キノホルムの輸入、管理等について適正な規制を行うよう求める意見書を公表しました。
このように、小委員会の対象がエイズの問題に限られず医療における患者の権利全般に広がりつつあることから、小委員会の名称を「医療と患者の権利」小委員会と改めることにしました。
医療と患者の権利小委員会は現在活動を休止しています。