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情報公開

2011年10月14日第二小法廷判決

問題点

日本を代表する環境NGOである気候ネットワークが、地球温暖化防止活動に際して、製造業の事業者の二酸化炭素の排出量を正確に把握するため、省エネ法に基づく定期報告書の開示を求めたところ、法人等情報(情報公開法5条2号イ)に該当するとして一部不開示処分がなされた。同処分につき、取消と開示の義務付けが認められるか。

内容

須藤、千葉(多数意見)
本件数値情報が開示された場合には,これが開示されない場合と比べて,競争者が事業上の競争や価格交渉等においてより有利な地位に立つことができる反面,本件各事業者はより不利な条件の下での事業上の競争や価格交渉等を強いられ,このような不利な状況に置かれることによって本件各事業者の競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性が客観的に認められるから、不開示とすべきである。

コメント

東京、大阪、名古屋の各地裁及び東京高裁、名古屋高裁は、事案を詳細に分析し、この情報が開示されても、競業他社等は、製造原価などを競争上の不利になるほどきめ細かく推計できず競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性が認められないとした。これに対して、最高裁の判旨は、開示されないより開示された方が多少製造原価を正確に推計できる程度であれば足り、推計された粗い製造原価が何に使えるかまでは考えなくてよいと読める。

そもそも、情報公開法は憲法21条に基づく「知る権利」を裁判が可能な具体的権利としたものである。この憲法上の「知る権利」を制限するには、権利行使による具体的な弊害(害悪)が論証される必要があるはずである。法人情報の該当性判断も、「知る権利」の制限に関する判断であるから、開示による弊害が、政府により論証される必要がある。ところが、最高裁は、この論証のハードルを下げた。憲法の番人としての最高裁判所の役割放棄というべき残念な判決である。
(牧田 潤一朗)

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