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議員定数不均衡

2011年3月23日大法廷判決

問題点

2009年8月の衆議院議員総選挙における、選挙区割り及び選挙運動に関する公職選挙法等の規定は、憲法14条等に反し無効か。なお、議員1人当たりの人口の選挙区間での較差は、最大で1対2.304であった。

内容

須藤、千葉、横田、白木、岡部、大谷、寺田(多数意見)
1人別枠方式(各都道府県内の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当すること)は、較差を生じさせる主要な要因となっており、また、上記選挙の際にはその合理性がないので、憲法の投票価値の平等に反する状態に至っていたが、是正のための合理的期間を経過していないので、上記規定は違憲無効ではない。

コメント

本判決は、1人別枠方式により違憲状態となっていることを判示した点で画期的なものであるといえる。
他方で、本判決は、1人別枠方式は、それが定められた時点では合理的なものであるとし、また、是正のための合理的な期間を経過しておらず違憲無効ではないとした。この点、田原裁判官の反対意見においては、1人別枠方式は、制定当初から違憲である(過疎地域に対する配慮をその目的としながら実際には過疎地域は恩恵を受けず過疎地域でない地域が恩恵を受けている、なお、激変緩和措置という目的もその効果が明らかではない、などの理由)とされた。また、宮川裁判官の反対意見においては、遅くとも2002年7月頃までには1人別枠方式は廃止されるべきであり、同方式は違憲であるとされた。多数意見が、違憲という明確な判断を避けた点を問題と考えることもできる。是正の機会は十分に与えられており、違憲とされて然るべきであると考える。
(武藤 久資、藤原 家康)

2012年10月17日大法廷判決

問題点

2010年7月の参議院議員選挙における選挙区割りに関する公職選挙法等の規定は、憲法14条等に反し無効か。なお、議員1人当たりの人口の選挙区間での較差は、最大で1対5.00であった。

内容

千葉、横田、白木、岡部、大谷、寺田、山浦、小貫(多数意見)
本件選挙が平成18年改正による4増4減の措置後に実施された 2回目の通常選挙であることを勘案しても、本件選挙当時、投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており、これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以上、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない。
もっとも、選挙制度の仕組み自体の見直しについては、参議院の在り 方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められるなど相応の時間を要し、また、参議院において制度改革に向けての検討が行われていたことなどから、本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。

須藤(反対意見)
是正がなされるべき起算点は、遅くとも、2006年大法廷判決がなされた同年10月頃であるところ、その後、是正に必要とされる、真摯かつ継続的な検討作業が行われていない。この立法不作為は国会の裁量権の限界を超えており、違憲である。
なお、本件選挙については、違憲であるが無効としない(事情判決の法理)ことが相当であるが、2013年選挙に至っても見るべき取組がない場合、選挙無効訴訟の提起された選挙区の選出議員の選挙に限っては無効とせざるを得ない。

大橋(反対意見)
本件定数配分規定は違憲である(事情判決の法理により、無効とはしない)。2004年大法廷判決以降本判決までの間に、是正のための真摯な努力がなされたとはいえない。2007年選挙についても、憲法の違反があったと評価することが相当であった。

コメント

上記の2011年判決と同様、多数意見は、現状が違憲状態であると判示した点で画期的であるといえる。また、参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難いとした点も、評価できる。
他方、多数意見は、違憲という明確な判断をしなかったものであり、この点を問題と考えることもできる。2004年大法廷判決で、最大較差1対5.06であった2001年参議院議員選挙につき、合憲の判断がなされたが、裁判官6名による反対意見のほか、漫然と同様の状況が維持されるならば違憲判断の余地がある旨を指摘する裁判官4名の補足意見がなされたにもかかわらず、目ぼしい是正は2006年の公職選挙法改正における4増4減のみであり、これによっても最大較差は1対4.84程度としかならず、その後も、2009年大法廷判決で「大きな不平等状態が存する状態」との判示がなされ、その上でも特段の是正がなされず本件選挙に至った、という経緯からすれば、違憲とされても致し方ないと考える。
(藤原 家康)

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