1947年に創立された、人権擁護を唯一の目的とした人権NGOです

芹沢斉

今、日本社会は、「戦後レジーム」から「脱却」するか否か、すなわち日本国憲法体制を破壊するか否かの瀬戸際に立たされています。言うまでもなく、「戦後レジーム」とは、人権の尊重、国民主権主義、平和主義の三つを基本原理とする日本国憲法を土台とも柱ともして築き上げられてきたものですから、「戦後レジームからの脱却」を唱える人々の本音は憲法原理のすべてを否定したいということでしょう。そのことは、当協会が昨年2月に刊行した『改憲問題 Q&A』で示したところですし、昨今の自民党の総裁から陣笠議員までの言動からも明らかです。

ところで、私は「理事会の定足数を充たす要員」として理事を引き受けました。その頃高まりを見せていた改憲の動きはあくまでも憲法改正という正規の手続きを経て憲法を変えようとするものでした。このたび代表理事になるときの「カイケン」は、「改憲」ではなく、「壊憲」、すなわち憲法の概念の改変を数の力――それは得票数の上でかなり低位の相対多数に過ぎない自民党及び連立与党の公明党が、小選挙区制の弊害の助けを借りて衆議院で3分の2以上の多数を占めるという歪みでしかない。――で強引に押し通そうとするものですから、政治の劣化は歴然です。また、知性や教養を否定するかのごとき反知性主義が社会に瀰漫しています。これは、当協会の名称の一部でもある「市民的自由」にとって由々しき状況です。

このような政治・社会の状況を前にして、ほぼ30年間大学で憲法の研究と教育をしてきた私は、憲法がこのような状況になってしまっていることにつき何がしかの反省を迫られながら、同時にその経験が、憲法ひいては「市民的自由」の問題につき、より良い方向への進展にいくばくかの寄与をなす素地ともなりうるのではないかと思っています。先輩代表理事や同時に代表理事となった升味さんと協働してJCLUのために尽力していきたいと思いますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。

プロフィール

芹沢 斉(せりざわ ひとし)
1946年10月、静岡県生まれ。1969年東京大学法学部卒業。同大学大学院法学政治学研究科(憲法専攻)を経て、1977年神奈川大学法学部専任講師、(中略)、83年青山学院大学国際政治経済学部助教授、(中略)、88年同大学法学部教授、2004年同大学法科大学院移籍、2015年3月同定年退職、同大学名誉教授。

主な著書

  • 『新基本法コンメンタール 憲法』市川正人・阪口正二郎との共編著(日本評論社、2011年)
  • 『時代を刻んだ憲法判例』石村修・浦田一郎との共編著(尚学社、2012年)

主な論文

  • 「近代立憲主義と『抵抗権』の問題」(『現代国家と憲法の原理』所収、有斐閣、1983年)
  • 「青少年条例の思想」(『憲法訴訟と人権の理論』所収、有斐閣、1985年)
  • 「法治主義」『ドイツ公法の理論』所収、一粒社、1992年)
  • 「子どもの自己決定権と保護」(講座『現代の法』第14巻所収、岩波書店、1998年)
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