1947年に創立された、人権擁護を唯一の目的とした人権NGOです

公務員の政治活動の自由

2012年12月7日第二小法廷判決

問題点

被告人である厚生労働省の課長補佐が、郵便受けに、日本共産党の機関紙を投函して配布した行為が、国会公務員法違反として有罪となるか。本件罰則規定が、政治活動の自由(憲法21条)を侵害し、また、適正手続(憲法31条)に反し、違憲か。

内容

千葉、小貫(多数意見。千葉は、補足意見も)
被告人の行為は、本件罰則規定の構成要件に該当し、有罪である。

須藤(反対意見)
被告人の行為は、本件罰則規定の構成要件に該当せず、無罪である。

コメント

多数意見が、いわゆる猿払事件大法廷判決とは異なり、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかを、諸般の事情を総合して判断しようとした点は、一定の評価ができる。しかし、多数意見が、被告人は筆頭課長補佐であることから、他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあったとされ、機関紙の配布により、様々な場面でその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まり、部下に影響を及ぼすことになりかねないので、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる、とした点は、具体的かつ説得的な論証とはいえないものと考える。

むしろ、政治的傾向と職務の中立性との関係は示されておらず、無罪とすべきであったと考えられる。
(藤原 家康)

2012年12月7日第二小法廷判決

問題点

被告人である社会保険庁の厚生労働事務官が、日本共産党の機関紙等を投函して配布した行為が、国会公務員法違反として有罪となるか。本件罰則規定が、政治活動の自由(憲法21条)を侵害し、また、適正手続(憲法31条)に反し、違憲か。

内容

千葉、須藤、小貫(多数意見。千葉は補足意見、須藤は意見も)
被告人の行為は、本件罰則規定の構成要件に該当せず、無罪である。

コメント

多数意見が、いわゆる猿払事件大法廷判決とは異なり、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかを、諸般の事情を総合して判断しようとした点は、一定の評価ができる。また、被告人のように、公務員が政治活動を行ったことにつき罪に問われて、無罪となったことは画期的であり、結論においては評価できる。

ただし、被告人の地位や職務内容に着目してはじめてこの結論が導かれているとしたら、それは妥当ではない。職務の中立性が具体的に害される事態に至って初めて規制されるべきものであり、そのことは、当該公務員の地位や職務内容とは、必ずしも関係がないからである。
(藤原 家康)

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
PAGETOP
Copyright © 公益社団法人 自由人権協会 All Rights Reserved. 記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。