2010年7月22日第一小法廷判決
問題点
市長が、市内にある神社(白山ひめ神社)の鎮座2100年を記念する大祭を奉賛する団体の発会式に出席して祝辞を述べたことが、政教分離に違反し違憲か。
内容
横田(多数意見)
市長の行為が宗教とのかかわり合いを持つものであることは否定し難い。他方で、地元にとって、本件神社は重要な観光資源でもあり、大祭も観光上重要な行事であった。本件発会式は市内の一般の施設内で行われており、宗教的儀式を伴うものでもなかった。市長の参加は社会的儀礼の範囲内であり、政教分離に反せず、合憲である。
コメント
本件の原審は、市長の行為は政教分離に反するとしており、上記判断と逆の結論となっている。
なお、上記の最高裁の判断では、重要な観光資源であることが合憲の理由の一つとなっているが、観光ということで国家の関わりが正当化されるのであれば、国家と宗教の安易な結びつきにもつながりかねないと思われる。
また、本件発会式が一般の施設内で行われたということも、政教分離に関する検討において重要視されるべきものとはいえない。場所の問題ではなく、どのような実質を伴うものか、が重要である。
市長が、本件発会式に出席することも、それに加えて祝辞を述べることも、その必要性も疑わしいし、また、相当な程度であったことについても、疑問があると言わざるを得ない。
(藤原 家康)