人権協会の生まれるきっかけであり、活動のバックボーンである日本国憲法の危機が目前に広がるこの時期に代表理事の任務を仰せつかり、かなりの重圧を感じています。
長年、憲法擁護や人権尊重が、言葉だけの実感のないものと見られるという雰囲気を感じてきましたが、今、急激にそれらの実体が重さを伴って認識されるようになっています。安保法制の強行採決に抗議する国会前の集会では、20代前半を中心に、普段着の人々がなんのてらいもなく、自然に「戦争反対、憲法守れ」「勝手に決めんな、国民なめんな」「民主主義ってなんなんだ」「立憲主義って何なんだ」と声を合わせます。この時、憲法や民主主義や立憲主義が人々の血となり肉となり、怒りが湧き上がっていると感じます。危機の時だからこそ憲法がくっきりと姿を現してきました。
安保法制だけでなく、今、国民の多数の明確な意思に反して進められている政策は、原発再稼働、沖縄辺野古の新基地建設、派遣労働法制、新国立競技場の建設(これはさすがに見直しの方向のようですが)と多数ありますが、その底流には 共通に、民主主義・立憲主義の否定につながる軽薄な権力意識が見え隠れします。
微力ではありますが、憲法と沖縄、世界から見た日本の人権状況をテーマに、人権協会らしい問題提起、研究と、研究の成果の社会への還元に力を入れ、人権とこれを支える立憲主義、民主主義が実感を伴って人々の血となり肉となる活動をすすめたいと考えています。それぞれの会員の方から、問題提起をよろしくお願いします。
プロフィール
升味 佐江子(ますみ さえこ)
1956年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。1986年4月弁護士登録。
2009年から2012年まで最高裁判所司法研修所刑事弁護教官
公益社団法人発達協会理事等も務める。